- 2026年6月18日
- 2026年7月15日
いびきの原因は、口呼吸かもしれません|鼻呼吸と一酸化窒素で変わる、睡眠中の気道の話
自分のいびきを録音して、思ったより大きくて驚く。いびきは「疲れているから」「体質だから」と思われがちです。
しかし、いびきの多くは、寝ている間の呼吸のしかたと関係しています。
特に注目したいのが、口呼吸です。
口を開けて寝ていると、舌がのどの奥に落ちやすくなります。すると空気の通り道が狭くなり、そこを空気が無理に通ることで、のどの奥がブルブルと振動します。
この音が、いびきです。つまり、いびきは「音の問題」だけではありません。
寝ている間に、空気の通り道が狭くなっているサインでもあります。
いびきは「うるさい」だけの問題ではない変わる
いびきをかいているとき、体の中では何が起きているのでしょうか。
いびきは、のどの奥が振動する音
口を開けて眠ると、舌の付け根が後ろに下がりやすくなります。
さらに、上あごの奥にあるやわらかい部分も振動しやすくなります。
この状態で空気が通ると、のどの奥が震えます。
それが、いびきの正体です。
気道が狭くなると、酸素が入りにくくなる
いびきが出ているということは、空気の通り道である「気道」が狭くなっている可能性があります。
気道が狭いと、寝ている間に十分な酸素を取り込みにくくなることがあります。
そのため、いびきは単なる音の問題ではなく、睡眠の質や体の回復にも関わる大切なサインです。
口呼吸で眠ると、気道がふさがりやすくなります
口呼吸は、いびきと深く関係しています。
口を開けると、舌が下がりやすい
口を開けて寝ると、あごが下がり、舌の位置も下がりやすくなります。
舌がのどの奥に近づくと、空気の通り道が狭くなります。
その結果、いびきが出やすくなります。
研究でも、口呼吸の影響が確認されています
口呼吸が睡眠中の気道にどれほど影響するのか。
それを調べた研究があります。
健康な人を対象に、鼻呼吸で眠った場合と口呼吸で眠った場合を比べて、
睡眠中の呼吸状態を検査した研究です。
そこで使われた指標が、AHI(無呼吸低呼吸指数)です。
AHIとは、1時間あたりに「呼吸が止まる」または「呼吸が弱くなる」回数のことです。
この研究では、鼻呼吸のときのAHIは平均1.5でした。
ところが、口呼吸になるとAHIは平均43まで上がりました。
AHIが43という数値は、一般的には重度の睡眠時無呼吸に近いレベルです。
つまり、同じ人であっても、鼻で呼吸するか、口で呼吸するかによって、
睡眠中の気道の状態が大きく変わる可能性があるということです。
口を開けて眠ることは、単に口が乾く原因になるだけではありません。
舌がのどの奥に落ち込みやすくなり、空気の通り道を狭くしてしまう可能性があります。
その結果、いびきが出やすくなり、呼吸も乱れやすくなるのです。
鼻呼吸は、気道を守る呼吸です
では、なぜ鼻呼吸が大切なのでしょうか。
鼻は、ただ空気を通すだけの場所ではありません。
鼻は空気をきれいにしてくれる
鼻から息を吸うと、空気は鼻の中を通ります。
その間に、空気は温められ、湿り気を与えられ、ほこりなども取り除かれます。
鼻のほどよい抵抗が、のどを支える
鼻の中は、口よりも少し狭い通り道になっています。
この「ほどよい狭さ」が、呼吸にとって大切です。
鼻を通って空気が入ることで、のどの奥がつぶれにくくなり、気道を支えやすくなると考えられています。
反対に、口呼吸になると、この支えが弱くなります。
そのため、舌が下がり、のどの奥が狭くなり、いびきが出やすくなります。
鼻には、もう一つ大切な働きがあります
それが一酸化窒素です
鼻呼吸のメリットは、気道を支えることだけではありません。
鼻には、口にはない大切な働きがあります。
それが、一酸化窒素です。
一酸化窒素(NO)は鼻の奥で作られる気体
鼻の奥には、副鼻腔という空洞があります。
この副鼻腔では、一酸化窒素という気体が作られています。
一酸化窒素は、体の中で大切な働きをする物質です。
たとえば、血管を広げたり、細菌に対する防御に関わったりします。
鼻呼吸をすると、一酸化窒素が気道に届く
鼻から息を吸うと、副鼻腔で作られた一酸化窒素が空気と一緒に気道へ届きます。
しかし、口呼吸ではこの働きが得られにくくなります。
つまり、鼻呼吸には「空気の通り道を守る働き」と「一酸化窒素を体に届ける働き」の両方があるのです。
ハミングで一酸化窒素が増えることがあります
寝る前にできる簡単な方法として、ハミングがあります。
鼻歌のように「んー」と声を出す
ハミングとは、口を閉じて「んー」と鼻に響かせるように声を出すことです。
研究では、ハミングをすると、呼気中の一酸化窒素が通常より大きく増えることが確認されています。
これは、ハミングの振動によって、副鼻腔の空気が入れ替わりやすくなるためと考えられています。
寝る前に2〜3分でよい
特別なトレーニングをする必要はありません。
寝る前に、好きな曲を鼻歌で2〜3分ハミングする。
それだけでも、鼻呼吸を意識するきっかけになります。
ただし、ハミングだけでいびきや睡眠時無呼吸が治るわけではありません。
あくまで、鼻呼吸をしやすくするための習慣の一つとして考えましょう。
口呼吸で寝ているか確認したい3つのサイン
自分や家族のいびきが、口呼吸と関係しているかを確認してみましょう。
①朝起きたとき、口が乾いている
朝起きたとき、口の中がカラカラに乾いていませんか。
これは、寝ている間に口が開いていたサインかもしれません。
鼻呼吸で眠れている場合、口の中はそこまで乾きにくいです。
②いびきや「呼吸が止まっている」と言われたことがあるか
家族やパートナーから、
「いびきが大きい」
「寝ているときに呼吸が止まっているように見える」
と言われたことはありませんか。
この場合、気道がかなり狭くなっている可能性があります。
特に、呼吸が止まっていると言われた場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性もあります。
自己判断せず、医療機関への相談をおすすめします。
③日中も口が開いていることが多い
スマホを見ているとき。
仕事をしているとき。
ぼーっとしているとき。
気づくと口が開いていませんか。
日中に口呼吸が多い人は、寝ている間も口呼吸になりやすいです。
夜のいびきを減らすためには、日中の呼吸のくせを見直すことが大切です。
今日からできる3つのいびき対策
いびきが気になる人は、まず次の3つから始めてみましょう。
① 日中から鼻呼吸を意識する
一番大切なのは、普段から鼻呼吸をすることです。
気づいたときに口を閉じる。
鼻から静かに息を吸う。
鼻から静かに息を吐く。
これをくり返すことで、鼻呼吸の習慣がつきやすくなります。
いびき対策は、寝るときだけでなく、昼間の呼吸から始まります。
② 就寝前のハミングを習慣にする
寝る前に2〜3分、口を閉じて「んー」とハミングしてみましょう。
ハミングは、鼻に空気を通す感覚をつかみやすくします。
また、副鼻腔の一酸化窒素を増やします。
難しく考える必要はありません。
好きな曲を鼻歌で歌うだけで大丈夫です。
③ マウステープを試してみる
軽いいびきの場合、口に専用のテープを貼って寝る「マウステープ」が役立つことがあります。
軽度の睡眠時無呼吸の人を対象にした研究では、マウステープによって、いびきの回数や無呼吸の回数が減ったという報告もあります。[5]
ただし、誰にでも合う方法ではありません。
次のような人は、自己判断で使わないでください。
・鼻づまりがある人
・呼吸器の病気がある人
・寝ている間に呼吸が止まると言われたことがある人
・強いいびきがある人
・高齢で不安がある人
鼻でしっかり呼吸できない状態で口をふさぐのは危険です。
不安がある場合は、医師に相談してから使いましょう。
いびきは「年齢」や「体質」だけではありません
「いびきは年齢のせい」
「太っているから仕方ない」
「昔からだから変わらない」
そう思っている人もいるかもしれません。
もちろん、年齢、体型、あごの形、鼻づまり、飲酒、疲労なども、いびきに関係します。
しかし、見直せることもあります。その一つが、口呼吸です。
日中から口を閉じ、鼻呼吸を意識する。
寝る前に鼻が通っているか確認する。
鼻づまりがあるなら、耳鼻科に相談する。
こうした小さな見直しが、夜の気道を守ることにつながります。
いびきは、ただの音ではありません。
体が出している呼吸のサインです。
まずは、口呼吸から鼻呼吸へ。
ここから始めてみましょう。
いびきと鼻呼吸についてよくある質問
いびきは疲れているときだけ出るものですか?
疲れているときやお酒を飲んだ日は、いびきが出やすくなります。
しかし、いつも口呼吸をしている人は、疲れていない日でもいびきをかきやすい状態になっていることがあります。
いびきが続く場合は、疲れだけでなく、口呼吸や鼻づまりも確認してみましょう。
鼻がつまっているので鼻呼吸ができません。どうすればいいですか?
鼻づまりがあると、鼻呼吸は難しくなります。
その結果、口呼吸になりやすく、いびきも出やすくなります。
まずは耳鼻科で、鼻づまりの原因を確認することが大切です。
アレルギー性鼻炎、鼻中隔彎曲、副鼻腔炎などが関係している場合もあります。
鼻づまりが改善すると、鼻呼吸がしやすくなり、いびき対策にもつながります。
呼吸科学アカデミーでお伝えしているビュテイコ呼吸法にも、鼻づまりに対する呼吸エクササイズがあります。気になる方はご相談ください。
一酸化窒素(NO)は体に悪くないのですか?
鼻の奥で自然に作られる一酸化窒素は、体に必要な働きをする気体です。
鼻呼吸によって届く量はごく少量で、血管を広げたり、気道を守ったりする働きに関係しています。
ここでいう一酸化窒素は、体の中で自然に作られるものです。
危険なガスを吸うという意味ではありません。
マウステープはどんな人に向いていますか?
マウステープは、鼻呼吸ができる人で、軽いいびきがある人に向いている可能性があります。
ただし、鼻づまりがある人や、睡眠時無呼吸症候群の可能性がある人には向きません。
特に、寝ている間に呼吸が止まると言われたことがある人は、自己判断で使わないでください。
まずは医療機関に相談することをおすすめします。
ハミングをすると本当にNOが増えるのですか?
研究では、ハミングをすると、呼気中の一酸化窒素が大きく増えることが確認されています。
ハミングの振動によって、副鼻腔の空気が動きやすくなるためと考えられています。
いびきが激しい場合はどうすればいいですか?
いびきが激しい場合や、寝ている間に呼吸が止まっていると言われた場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
この場合、口呼吸の改善だけで済ませるのは危険です。
睡眠専門外来、耳鼻科、内科などで相談し、必要に応じて検査を受けましょう。
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、CPAPなどの治療が必要になることもあります。
※CPAP(シーパップ)=睡眠中に気道を常に広げておくことで無呼吸を防ぐための持続陽圧呼吸療法、またはその専用医療機器を指します。睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対する最も標準的かつ効果的な治療法で、健康保険が適用されます。
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